「うわあ……すごーい。広くて大きくて綺麗ー」
蓮がホテルのエントランスロビーを見渡し、真っ先に感嘆の声を上げた。
大きな窓ガラスの奥には美しい庭園が見える。
正面入り口を入った目の前には大きな花瓶に生けられた美しい花々が飾られ、床には高級な織りカーペットが敷かれている。
見上げるほどに高い天井にはスワロフスキーを使用した巨大な逆三角形型のシャンデリア。
ロビーに等間隔に置かれた立派な革張りのソファにはセレブ客が新聞を広げたり、談笑している姿も見られた。
「お母さん、僕……こんなすごい場所に来るのは初めてだよ」
蓮は目をキラキラさせながら興奮していた。
「そうね。蓮ちゃん。お母さんも滅多にこんな場所には来ないわ」
すると蓮は修也に尋ねた。
「修ちゃんはこういう場所、来たことある?」
「うん……そうだね。たまーに来るかな?」
修也は笑いながら返事をする。
「へえ~修ちゃんてすごいんだね。こんな素敵な場所にたまに来るなんて」
「あのね、蓮ちゃん。各務さんは鳴海グループの副社長をしているえらーい人なのよ。だからお仕事とかで、こういう場所に来るんだから」
それを聞いた修也は苦笑した。
「ハハ……僕はあくまで副社長代理だから。それよりもこれからもっと凄い人に会うんだよ。蓮君の曾お爺さんは、会社を作った一番偉い人なんだから」
「え!? 僕の曾お爺ちゃんてそんなに偉い人なの!?」
蓮が大きい声を上げた時。
「ハッハッハ。嬉しいなあ。可愛い曾孫にそんなふうに言ってもらえるとは」
朱莉たちの背後で声が聞こえた。3人が振り向くと、そこには猛と秘書の滝川の姿がある。
「鳴海会長、お久しぶりでございます」
朱莉は頭を下げた。
「会長、お久しぶりです」
修也も頭を下げる。
一方の蓮は初めて見る猛に人見知りして朱莉の足にしがみつくようにじっと猛を見つめていた。そこで朱莉が声をかけた。
「蓮ちゃん、この方が蓮ちゃんの曾御爺様よ」
「あ、あの……こんにちは……」
蓮は朱莉の足を離すと、ぺこりと頭を下げる。するとそれを見た途端、猛が笑った。
「蓮か。お前の曾お爺ちゃんだよ。ちゃんと挨拶出来て、なんてお前はおりこうさんなんだ。初めて会った時はまだ赤ちゃんだったのに」
ニコニコ笑いながら猛は蓮の頭を撫でた。すると蓮は顔を赤くしながらも嬉しそうに笑う。
「蓮、曾お爺ちゃんが素敵な場所へ連れて行ってあげよう